コーヒーtips

バリスタマインドと、ロースターマインド

OTOCA_HOME

40年ほど前、ある男性が喫茶店で働いていた。その男性は美味しいコーヒーを淹れたいと思い今で言うバリスタの職を目指していたわけだが、2~3年経った頃にある事に気付いた。

「美味しいコーヒーを求めるのなら、ここではない。焙煎士にならなければならない!」

そうしてその後今日まで、焙煎士として働くことになる。





岐阜は大垣にある、とある焙煎所。と言ってもとても小さくて、お洒落でもなんでもない。精米所みたいな感じだった。
豆の種類も多くはない。ブレンドと、後はイルガチェフェ・モカなど数種類があったと思う。

その焙煎士はそこにおられた。たまたま出会ったが中々の、独自の哲学を持っておられてとても面白かったのに加え、いろんな気付きがあった。


その焙煎士が言うには。
ズバリ昨今のバリスタと言われる人達は、何か勘違いをしているんじゃないか



「どこどこの店に、○○と言うバリスタがいる」
「一度○○バリスタの淹れたコーヒーを飲んでみたい」

別に全て本人が言っているわけではないけれど、のぼせ上がるんじゃない!と。


お百姓さんがちゃんと育てて、正しく焙煎された豆なら誰が淹れたって美味しいのだ。そこを変に、ブランド価値の様なものを乗っけてはいないか?コーヒーに対して敷居を上げてしまってはいないか?


その焙煎士はそう言うのだ。なるほど。
クラブのDJのケースに似ている気がした。海外のクラブではDJはどこにいるか分からないくらい隅で音楽をかけていて、フロアではお客さんが踊っていたり、ビリヤードをしたりと”楽しんでいる”。
日本のクラブではDJは立派なステージ上に立ち、観客はみんなDJを見に行く。みんながDJの方を向いている光景が一般的だ。だけど、DJの本質的な仕事とは何なのだろうか?



その焙煎士は言っていた。「”美味しい”を独り占めするんじゃない。”美味しい”はみんなのモノだ」と。
ちょっと解釈は難しいし僕自身正確に理解出来ている自信がないが、先のDJの例に置き換えて考えてみると少し解かる気がする。

一番偉いのは、他でもない農家の人である。

農家の人が良いコーヒー豆を育ててくれる。
それをバイヤーやロースターが更に選び抜き、正しく焙煎する。これに尽きる!



ちなみに”正しく焙煎する”とはどう言う事なのか。
良い豆の中でも当然農作物なので大きさも違えば質という意味でのバラツキもある。その選んできた豆が100点満点で90点~100点だとする。

焙煎が上手でないと、豆一粒一粒に対しての仕上がりのムラが大きくなってしまうのだという。豆によって焙煎のされ方も異なる。
なので上手に焙煎すれば90点の豆は85点~90点のコーヒー豆に出来るのに、うまく出来なければ60点~80点の仕上がりにしてしまうと言うイメージだ。

つまり先に書いた豆を焙煎した場合、上手な人は85点~100点に仕上げる事が出来るがそうでなければ、60点~90点の仕上がりになってしまう、という風にその焙煎士は話していた。
焙煎によって「豆を良くする」のではなく、如何に「豆本来の持っている良さを損なわせないか」。プラスを考えるのではなくマイナスに振らないと言う考え方だった。


話は戻り。。
なのでその焙煎士は、淹れ方云々なんてどうだって良いと言い切る。
(その彼に限って言えば)自分の焙煎には絶対的な自信があるから、どんな淹れ方をしたところで美味しく仕上がる。バリスタは大船に乗った気持ちで安心して淹れなさい、という訳だ。
焙煎士の鏡だ!!




しかし。個人的には、喫茶店やカフェでコーヒーを飲むという行為はそこの空間を含め、時間を買っているのだと思っている。なので、コーヒーを淹れている人もパリッとした服装で、スマートにカッコよく淹れてくれている方が僕は良いと思う。
(バーにお酒を飲みに行くなら、やはり洗練された所作で格好良いマスターに提供して欲しい。)

勿論好みや”良さ”と言うものは人それぞれであり一面的な物でもないので、エプロンしたままのママが淹れてそのまま持ってきてくれるお店だって好きです。

ただ自分は今後もコーヒーやエスプレッソを提供する上で、大垣の焙煎士が言っていた事は頭に留めておこうと思っている。カッコはつけても、自惚れない。

ABOUT ME
記事URLをコピーしました