金属フィルターでの抽出についてもう少し掘り下げて検証
前回フレンチプレスでの抽出と、金属フィルターでの抽出って違いはあるのかなっていう検証をしました。
結果は、フレンチプレスの方は酸味も苦味も甘さもどっしりと出てくる印象で、金属フィルターの方はどちらかというと苦味が前に出てくるなっていう印象でした。
方向性的にはどちらも土壌感のある、豆そのものの個性を飾ることなくそのまま出すことの出来る感じです。
そこでもう少し金属フィルターのポテンシャルを探って、改めて考察しようと思います。
具体的には以前のフレンチプレスと金属フィルターの比較時のレシピをベースに、湯温を上げる、湯温を下げる、粉量を増やす、湯を細くして抽出時間を伸ばす、という事をやってみようと思います。
使用する豆:ジュピター Sクラスブレンド
検証時の条件
・使用グラインダー:NEXT G
・使用器具:KINTO SCSコーヒーカラフェ+ステンレスフィルター(2cups)
・使用濃度計:ATAGO PAL-COFFEE(BX/TDS)
・器具を温めておく
・TDS濃度測定前ゼロ校正実施
・検体液は微粉の沈殿をしばらく待つ
・液温の安定を待って測定
・検証1:抽出温度を上げ、95度で行う。
結果 ↓基準レシピでの値
フレーバー :”3” フレーバー :”3”
酸味 :”2” 酸味 :”2”
ボディ、コク:”4” ボディ、コク:”3”
アフター :”4” アフター :”4”
甘さ :”2” 甘さ :”2”
苦味 :”4” 苦味 :”4”
抽出時間:2分40秒
TDS:0.75 TDS:0.89
~コメント~
余り大きな違いは見られなかった。
やや、基本レシピよりも特徴が強調されたような印象。
苦味はよりハッキリした。ボディ感もよりしっかりしたかなという感じ。
・検証2:抽出温度を下げ、85度で行う。
結果 ↓基準レシピでの値
フレーバー :”2.5” フレーバー :”3”
酸味 :”2.5” 酸味 :”2”
ボディ、コク:”3” ボディ、コク:”3”
アフター :”3” アフター :”4”
甘さ :”2” 甘さ :”2”
苦味 :”4” 苦味 :”4”
抽出時間:2分40秒
TDS:0.76 TDS:0.89
~コメント~
良い意味でスッキリした液体になったなという印象。
酸味は、気持ち少し出てきたかな?というレベル。
苦味は変わらず、主張している。
・検証3:粉料を増やす。28gで抽出する。
結果 ↓基準レシピでの値
フレーバー :”3.5” フレーバー :”3”
酸味 :”1.5” 酸味 :”2”
ボディ、コク:”5” ボディ、コク:”3”
アフター :”5” アフター :”4”
甘さ :”2.5” 甘さ :”2”
苦味 :”5” 苦味 :”4”
抽出時間:2分55秒
TDS:1.08 TDS:0.89
~コメント~
かなり苦い液体になった。想定通り。
苦味もボディー感も出すぎている。
酸味もより感じにくくなった。
・検証4:湯を細くして、抽出時間を伸ばす
結果 ↓基準レシピでの値
フレーバー :”3.5” フレーバー :”3”
酸味 :”2” 酸味 :”2”
ボディ、コク:”4” ボディ、コク:”3”
アフター :”4” アフター :”4”
甘さ :”1.5” 甘さ :”2”
苦味 :”4” 苦味 :”4”
抽出時間:3分30秒
TDS:0.76 TDS:0.89
~コメント~
全体的に基準レシピよりも、どっしりとした印象。
酸味と甘さは感じにくく、苦味がしっかりと出ている。
ボディ感も十分に出ている。
考察
今回やりたかった事は、もっと酸味も引き出させて、苦味と共にバランスのとれた液体を抽出することは出来ないかということ。
湯温を上げたり粉量を増やすと言ったアプローチが金属フィルターの特徴を助長させる事になると言うのは想定内ですが、湯温を下げてもあまり傾向は変わりませんでした。
金属フィルターの中でも色々な種類を試せた訳ではないですが、やはりこのフィルターの特徴として苦味成分がしっかり出てくると認識しておいて良さそうに思えました。
※因みに今回変えたパラメータの中で、湯温を高くした条件は寧ろポジティブに働いたのではないかと感じます。
似た性質を併せ持つフレンチプレスと比較すると、フレンチプレスの方が酸味も苦味もバランス良く抽出させることが出来そうです。
好みや豆の種類などによって使い分けると良さそうですし、例えばモカやスペシャルティーと言った酸味に特徴をもつ豆を使った時にどういう結果になるのかも、やってみると面白いかもしれませんね。
ただ、フレンチプレスや金属フィルターにおけるウィークポイントだと思う点は、抽出後の粉や器具の処理です。
ペーパードリップはペーパーごと捨てる事が出来ますが、これらは細かなネットに粉を捨てないと配管に粉が流れていってしまいます。それと同時にパーツを洗ったりする手間もペーパードリップに比べ増えるので、そう言った意味でも上級者向け、こだわりのある方向けと言えそうです。