初めてコーヒーの仕事に携わったのは、29歳の時でした。

携わったと言っても、喫茶店でのアルバイト。当時目標を全て失って燃え尽きていた僕は、とにかく何か仕事をしなければと、友人をきっかけにコーヒー屋で働き始めました。

だけど初めからコーヒーが好きなわけではありませんでした。むしろ何の興味もない。コーヒーはどれを飲んでも同じ味でした。

幸い意識の高い周りの環境も助けて、しばらくするうちに少しずつコーヒーの勉強をするようになります。初めは座学から、そして技術的な練習も始めるようになります。

ハンドドリップの試験を受けて、次はエスプレッソの勉強。どうせならバールに立ちたい、周りの同期や後輩に負けるわけにいかない。そんな想いでいつの間にか、仕事時間外もエスプレッソの抽出やラテアートの練習に明け暮れる日々になりました。
毎日のように日が変わるまで練習して、また次の日仕事をするという生活の繰り返し。

しかしそんな充実した日々にも、お別れする日がやって来ます。でもこのまま辞めてしまうだけでは、せっかく身に付けたスキルを忘れてしまう。
そう考えた僕は、エスプレッソマシンの購入に踏み切ったのでした…